DNAが物質の構成材料になることはすでに1980年代から知られていた。DNAは相補的塩基対が水素結合する仕組みを利用して、DNAをシート状に加工し、魚の形やニコちゃんマーク、ふたが開く箱、さらには可動するDNAモーター(DNA motor)などが実現し、これらはDNAオリガミ(DNA origami)と呼ばれている。
一方、特定の立体構造をもつたんぱく質をデザインするのは著しく困難で、これまで、ごく小さいたんぱく質についての2~3の成功例があるにとどまっていた。そうした中、スロベニア国立化学研究所のR.ジェララ教授らはDNAオリガミの原理を用いて、長い鎖状のたんぱく質を三次元的に折り畳むたんぱく質オリガミを実現した。12本のαヘリックス(alpha helix たんぱく質の構造の一つで、ポリペプチド鎖がらせん構造をとったもの)を、多くの制限認識場(各種の塩基配列を認識する場)をもつ短いDNAからなるリンカー(linker 遺伝子工学などでよく用いられるDNAの断片)で結合したポリペプチドを調製したところ、αヘリックスが対を作り、いくつかのαヘリックスがロープのように巻いているコイルドコイルを辺にもつ正四面体を作った。しかも、この生成四面体構造は、塩酸グアニジンを加えるとほどけるのだが、それは天然のたんぱく質と同様な振る舞いである。将来的にはたんぱく質オリガミはドラッグデリバリーなどの分野で実用化する可能性をもっている。