多様な生命現象を主として化学の方法論を用いて研究する分野で、生物化学(biological chemistry)ともいう。その対象から、生化学を生物学の一分野とする見方もある。1833年に消化酵素のアミラーゼが発見され、さらに1897年にE.ブフナーが生命の助けを借りずに発酵に成功し、生化学は化学の中での一分野として確立した。生体を構成する全ての物質が生化学の研究対象だが、特にたんぱく質、核酸、糖質、脂質、酵素などが主要な対象であった。近年の遺伝子発現機構への関心の高まりから、DNA、RNA、リボゾームなどが重要な研究対象となってきた。生化学の著しい発展は種々の分析機器、手段の進歩によるところが大きい。各種のクロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、同位体標識、電子顕微鏡、紫外・赤外スペクトル、NMR、X線回折法などが化学の諸分野と同様に用いられている。遺伝学、生理学などや、より新しい分野である分子生物学との関連も深い。また、医学、薬学、農学などの学問の基礎でもあり、生命科学全般の発展に歩調を合わせ、その重要性はますます高まっている。