古くは、物質が酸素(O)を得る、あるいは水素(H)を失う反応を酸化、物質が酸素を失う、あるいは水素を得る反応を還元と呼んだ。しかし、原子構造や電子の役割の理解が進んだ現在では、酸化は物質が電子を失う反応、還元は物質が電子を得る反応と定義されている。これによって酸素・水素の受理を伴わない、より広い範囲の反応も酸化還元反応(redox reaction)に分類されるようになった。たとえば、反応CuSO4+Zn → Cu+ZnSO4では、銅(Cu)が還元され、亜鉛(Zn)が酸化されているが、酸素、水素の関与はない。化学反応で、相手に酸素を与える、あるいは相手から水素または電子を奪う物質を酸化剤(oxidizing agent 自身は還元される)、同様に相手から酸素を奪う、あるいは相手に水素または電子を与える物質を還元剤(reducing agent 自身は酸化される)という。このように、酸化還元反応は単独で起こることはない。酸化剤としては酸素の他に硫酸(H2SO4)などの強酸や、酸化マンガン(IV)(MnO2)などが、還元剤としては水素やナトリウム(Na)などの金属が知られている。酸化還元反応に際して、酸化剤が得た電子の数と、還元剤が失った電子の数は等しい。