物質の組成ないし構造を、その物質をつくる原子の種類と数で表記した式で、含まれる情報量によっていくつかの種類がある。なお、イオンに対する化学式をイオン式(ionic formula)と呼ぶこともある。1,2-エタンジオール(エチレングリコール)を例にする。組成式(compositional formula)「CH3O」は構成原子の種類と数を最小の比で示した式。分子式(molecular formula)「C2H6O2」は構成原子の種類と数を示した式。示性式(rational formula)「C2H4(OH)2」は分子式の中から官能基を抜き出して表示した式。下記の構造式(structural formula)
は分子内での原子のつながり方を示した式だが、構造式は実際の分子の形を表してはいない。分子の三次元構造を表現するためには、特別の工夫が必要である。
化学式を用いて化学反応を表したものを化学反応式(reaction equation)という。化学反応式では左辺に反応物、右辺に生成物を書くが、その際、原子の種類と数は両辺で一致しなくてはならない。両辺をむすぶ記号は、正反応(反応物から生成物へ)には「→」、両方向に進む反応には「」、平衡反応には「」を用いる。
たとえば、エタノール(2C2H5OH)と、ジエチルエーテル(C2H5OC2H5)と水(H2O)の分子間脱水の化学反応式の場合、
2C2H5OH C2H5OC2H5 + H2O
のように記す。