液晶は液体と結晶の中間の状態で、液体の特性の流動性と、結晶の特性の異方性(配置構造をはじめとする物理的な性質が方向によって異なる性質)の両方の性質をもっている。p-n-デシルオキシ安息香酸のような棒状有機分子が主に液晶となるが、ベンゼン環にエステル結合で6個のアルキル基が付いた分子などの円盤状の有機分子も液晶になる。
棒状の分子の結晶が完全に液体になると、分子の重心の位置の周期性も分子の配向の秩序も、ともに消失する。棒状分子がベンゼン環をもっているなど特定の条件を満たしていると、結晶に熱を加えたとき、液体になる前に、分子の重心の周期性は消失するものの、分子が一つの軸方向に長軸をそろえて並び、配向の秩序が保持され、液晶となる。こうした液晶をネマチック液晶(nematic liquid crystal)という。
液晶の中には、層状構造をとるものがあり、これをスメクチック液晶(smectic liquid crystal)という。層内において、棒状分子は分子軸をそろえて平行に並んでいるが、その向きは層面に垂直な場合もあるし傾いている場合もある。スメクチック液晶は、温度を上げていくと、完全な液体になる前に、より流動性のあるネマチック液晶を経由することがある。
分子内に光学活性部位があると、一つの軸に対して分子がらせん状に配向する液晶となり、これをコレステリック液晶(cholesteric liquid crystal)という。コレステロールの安息香酸エステルがその一例であり、1888年にF.ライニッツァーが発見した最初の液晶である。この液晶は液体にした後、冷えて結晶に戻るときに虹色に美しく輝き、液晶が注目されるきっかけになったといわれている。
テレビなどの液晶ディスプレーには、主にネマチック液晶が用いられている。液晶を2枚のガラス板あるいはプラスチック板にはさみ、透明電極で電場を掛けて液晶の向きを変え、光を遮断したり、通過させたりして映像を表示する。