胚性幹細胞ともいう。多様な細胞に分化する能力を保ち、増殖を続ける細胞を幹細胞といい、その中で胚に由来するものをES細胞という。1998年、アメリカのウィスコンシン大学のJ.トムソン博士は、体外受精の際に余った胚の提供を受け、それをもとにしてES細胞をつくり培養・増殖させることに成功した。この細胞をマウスの筋肉内に注入し、骨、筋肉、神経、消化管などの細胞の特徴をもつ腫瘍を形成させ、ES細胞が多くの組織や器官に分化する可能性を示した。臓器移植などに利用できる多くの組織や器官をつくりうる可能性があることから、万能細胞と形容される。しかし、ES細胞をつくるには、ヒトの胚を用いる必要があること、クローン(clone)技術を使うことにより、クローン人間の形成につながるおそれもあることから、各国でこの研究を規制する動きも盛んになっている。なお、幹細胞は成人の体にもあることが明らかになっている。骨髄には血液をつくる造血幹細胞(hematopoietic stem cell)以外に、骨や筋肉をつくる幹細胞も含まれており、脳からも神経をつくる幹細胞が見つかっている。