1920年代に、ドイツのH.シュペーマンらにより、初期の胚発生で、隣接する未分化の細胞群に神経系を誘導する原口上唇部という分化の中心があることが発見された。誘導(induction)とは、胚のある部分の分化が他の部分からの影響によって決定することをいい、その原因となるものは形成体(オーガナイザー organizer)とよばれたが、その正体は長い間不明であった。90年に、横浜市立大学の浅島誠教授(当時)らにより、中胚葉を誘導するたんぱく質が発見され、活性化をもたらすという意味で、アクチビンと名づけられた。その後、アクチビンは濃度により誘導する組織が異なり、高濃度では脊索や節間を、低濃度では結合組織や体腔上皮を誘導することがわかった。また、その濃度により細胞内の異なる遺伝子が活性化されることも明らかになった。なお、アクチビンの働きを抑えるインヒビン(inhibin)という物質も存在することがわかった。