ケータイ(携帯電話)で読む小説。電子出版としてネットで配信される小説をケータイの画面で読むのである。ケータイ画面の文字数、行数の増量化が長文の受信を可能にした。電子出版物はこれまで専用の機器を必要としていたが、それをネット化し、ケータイ化したもの。ブログ小説、ウェブ小説、ネット小説のケータイ化も可能である。
このケータイ小説が、ペーパー化され、文芸書として爆発的な売れ行きを示したのが、近年の小説世界の特徴である。美嘉の『恋空』(2006)や、メイの『赤い糸』(07)、百音の『永遠の夢』(06)など、若い女性を主人公に「恋愛」「病気」「事故」など、身近な出来事をロマン化し、主人公や登場人物に近い世代の読者を獲得した。会話が多く、横組みで、テンポの早い展開が、これまでの小説に馴染(なじ)んでいなかった、中高生を中心とした読者を‘小説'に引きつけた理由とされる。08年、長老作家の瀬戸内寂聴が「ぱーぷる」の筆名で、ケータイ小説『あしたの虹』を書き、話題を呼んだが、最近ではその勢いに陰りが見え始めている。