これまでも弱視者のための大活字本はあったが、現在進められているのは、読書人口の大きい団塊の世代の老化にともなって、単行本や文庫本、雑誌の活字を大きくしようという動きである。すでに新聞では10年ほど前から大活字化、鮮明化は進んでいたが、新潮文庫や角川文庫などの文庫では、大活字化は遅れていた。文庫本=若者向けというイメージが固定化されていたわけだが、高齢化社会への移行とともに、大活字による〈目に優しい〉本が普遍的に求められてきたのである。
岩波文庫は以前から一部の書目を大判化し、大活字本としていたが、その拡充が早まりそうだ。新潮文庫では、たとえば川端康成の『雪国』の場合、旧版の1ページ、41字×17行の組み方が、38字×16行となり、紙面に余裕ができた分だけ活字のポイントを上げ、印刷面も鮮明となった。こうした傾向は、書籍だけにとどまらず、50歳代以上の読者をターゲットとする「今日から悠々」(新学社)などの総合、文化雑誌も誌面を大活字化し、今後、ますます高齢化社会となる日本での、中高年層読者の獲得を図っている。