村上春樹が、自分が、かつてある雑誌に書いた翻訳の生原稿が古書店で高額で売られていることに気づき、当時の担当編集者から流れたものとしてその経路をたどり、大手の出版社や、そこに所属する編集者による生原稿の管理、保管、返却の不備の問題について提議した文章を書いた(月刊「文芸春秋」2006年4月号)。古書店の組合では現存著作者の生原稿は取り扱わないと申し合わせているが、新規に開業する古書店ではこの限りではないという。事件の背景には、著作者の原稿がワープロ原稿のファクスでの送稿や、メール送稿が主流となり、手書きの生原稿が希少価値となりつつある現状がある。日本文芸家協会では、生原稿の所有権は著作者にあり、使用後は速やかに返却するように出版社、雑誌社、新聞社等に要請した。