ノーベル文学賞受賞(1999年)作家のギュンター・グラス(Gnter Grass 1927~)が、若い時にナチスの親衛隊(SS)の軍事部門に加入していたことを告白し、話題を呼んだ。グラスは、『ブリキの太鼓』(59)などの小説で旧西ドイツの戦後文学を代表する存在となり、ドイツの文学の左翼陣営の大物作家であっただけに、17歳の時とはいえ、ナチズムに加担していた過去を隠蔽(いんぺい)していたことに批判が集まったのである。勇気のある告白という評価もあるが、あまりにも遅すぎるその告白に、ノーベル賞を取り消すべきだとの声もあった。ノーベル賞ではこれまで受賞取り消しということはなく、授賞決定時に辞退したのは、文学賞ではパステルナーク(1890~1960 『ドクトル・ジバゴ』で受賞)とサルトル(1905~80)の例がある。しかし受賞を辞退しても、ノーベル賞に決定したという名誉は残る。