『源氏物語』が世に出てから約1000年ということで、記念行事や記念出版の類が相次い だ。これは『源氏物語』の存在が文献的に確認できるのが1008年(寛弘5)で、2008年がそれから1000年目になるというもの。『源氏物語』の成立からちょうど1000年ということではなく、やや話題先行の感もなしとはしない。与謝野源氏、谷崎源氏、円地源氏、瀬戸内源氏などの現代語訳が続々と復刊されると同時に、現代作家による‘超訳・新訳’の試みなど、出版不況をこれで乗り切ろうという出版界の思惑も透けて見える。異色なのは、アーサー・ウェイリーの英語訳を、日本語訳するという試みで、原文→英語訳→現代日本語訳という、翻訳の翻訳は、きわめて珍しい現象である。