主として明治時代以前の時代を背景に、武士や町人を登場人物として書かれた小説。江戸時代が中心で、それ以前の戦国時代や室町、鎌倉時代を背景とするものもあるが、平安・奈良時代、あるいはそれ以前を背景とするものは少ない。ただし、最近では明治時代を舞台背景とする時代小説もある。史実や歴史上の人物をテーマとした歴史小説とは一線を画し、虚構性が強く、剣豪小説、伝奇小説、捕物帖(とりものちょう)小説、市井小説(人情もの)など、細分化されたジャンルがある。池波正太郎の『鬼平』シリーズや『仕掛け人』もの、藤沢周平の海坂藩もの、平岩弓枝の『御宿かわせみ』、宮部みゆきの『日暮らし』シリーズなど、継続して書かれるシリーズものが目立つ。乙川優三郎、佐伯泰英、山本一力、荒山徹など、かつての山本周五郎、山田風太郎、柴田錬三郎などの人気作家の後を継ぐ実力派作家が活躍中だ。時代小説専門誌「KENZAN!」(講談社)も出され、時代小説のニューウェーブと称される。