時代小説の舞台設定で描かれるミステリーの一種。岡本綺堂の「半七捕物帳」を嚆矢として、野村胡堂の「銭形平次」、横溝正史の「人形佐七」、佐々木味津三の「むっつり右門」と「旗本退屈男」、城昌幸の「若さま侍」、山手樹一郎の「桃太郎侍」など、それぞれの作家によって個性的なキャラクターが造形され、作者の死後も映画やテレビドラマで新作が作られ、いずれも、息の長いシリーズものとして人気を持続させている。そこまでの知名度はないが、エドモン・ロスタンの「シラノ・ド・ベルジュラック」を髣髴(ほうふつ)させる「顎十郎」(久生十蘭の「顎十郎捕物帳」)や、「明治開化 安吾捕物帳」(坂口安吾)でワトソン役を演じる「勝海舟」など、多彩でユニークな登場人物も登場し、最近では、佐伯泰英が描く金座裏岡っ引き宗五郎親分とその子分の政次(「鎌倉河岸捕物控」シリーズ)や、宮部みゆきが描く超能力を持つ一膳飯屋の看板娘お初(「霊験お初捕物控」)が活躍するような、新しいキャラクターによる捕物帖(控)のシリーズも生み出され、長く隆盛を誇っている。