ミステリー(推理小説)の物語構造を作品内部のなかで考察するような「メタミステリー」や、従来のミステリーの約束事にこだわらない前衛的で実験的なミステリーを総称する。笠井潔の「バイバイ、エンジェル」や「哲学者の密室」のような哲学的、思弁的な傾向を持つものや、迷宮的構造を持つ竹本健治の「匣の中の失楽」などが、アンチミステリーの代表的な作品といえる。もともとは、夢野久作の「ドグラ・マグラ」、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、中井英夫の「虚無への供物」のような、従来の「探偵小説(推理小説)」を否定する要素を内在するような作品をこう称した。奥泉光の「グランド・ミステリー」、「神器-軍艦『橿原』殺人事件」や、島田荘司の御手洗潔シリーズ、古処誠二の殺人のないミステリー諸作なども、こうしたジャンルに入れてよいかもしれない。