福島第一原発の原発震災は、日本の文学が原発をどのように取り上げてきたかを問わせる契機となった。本書に収録された小説は現在単行本としては絶版となった井上光晴の「西海原子力発電所」をはじめ、清水義範の「放射能がいっぱい」、豊田有恒の「隣りの風車」、平石貴樹の「虹のカマクーラ」、野坂昭如の「乱離骨灰鬼胎草(ランリコツパイオニバラミ)」の5編。編者の柿谷浩一によれば、原発推進・反対という二分法を排するという意味で、豊田のようなアンチ反原発派の作品ともいえるものも収録したという。2011年10月水声社刊、解説・川村湊。