中華人民共和国の作家で、2012年度のノーベル文学賞受賞者。中国語で書く中国人の受賞は、高行健(こう・こうけん/ガオ・シンジャン)に次いで2人目だが、高行建がフランスに亡命した作家・戯曲家であることを考えれば、中国本国での中国人・中国語作品の受賞は初めて。中国人民解放軍に所属していたこともあって、体制派、御用作家との批判もあったが、中国国内では作品が発禁となったこともあり、一概には体制的と呼ぶことはできない。1955年生まれ。故郷は山東省高密県で、その作品の多くはここを舞台としている。ガルシア・マルケスなどのラテンアメリカ文学の特徴とされる、いわゆる「マジック・リアリズム」を駆使して、中国の風土や民俗に根差した、幻想的でデフォルメされた中国の現実社会を描ききった。日本にも知己は多く、数度来日しており、2006年度には、福岡アジア文化賞大賞を受賞している。張芸謀(チャン・イーモウ)監督により映画化され、1988年ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した「赤い高粱(こうりゃん)」(映画の邦題は「紅いコーリャン」)をはじめ、「酒国(しゅこく)」「豊乳肥臀(ほうにゅうひでん)」「蛙鳴(あめい)」などの代表作が邦訳されている。