民衆が皇居を襲撃し、当時の皇太子夫妻(現天皇・皇后夫妻)や天皇らを処刑するといった衝撃的な内容で筆禍事件となった深沢七郎の短編小説。2011年11月11日に、志木電子書籍より電子化されて複刻。13年8月20日の朝日新聞朝刊で大きく採り上げられたことにより、広く知られることとなった。1960年の「中央公論」12月号に同作が掲載されると、右翼団体等が激しく抗議。翌61年2月1日には、中央公論社・嶋中鵬二社長宅に17歳の右翼少年が侵入し、社長夫人に重傷を負わせるとともにお手伝いの女性を刺殺した。いわゆる「『風流夢譚』事件」(「嶋中事件」ともいう)である。衝撃を受けた深沢は、身を隠すように日本全国を放浪した。深沢の意思もあり、初出の「中央公論」以外にはこれまで活字化されることはなかったが、事件当時同誌の編集次長だった父を持つ志木電子書籍の代表が、「3.11後の今、改めて読まれる意味がある」として復刻に踏み切った。