パロディーは、既存の作品の批評的模倣。風刺、批判の意味合いが強い。平安前期の「伊勢物語」に対して寛永年間(1624~44)の「仁勢物語(にせものがたり)」(作者不詳)、平安中期の「源氏物語」(紫式部)に対して江戸後期の「偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)」(柳亭種彦)のような作品がパロディーである。和歌における本歌取りもパロディーの一種とされるが、本歌への敬意が前提となることから、オマージュに近い。パスティーシュは、文体模写(模倣)。日本では、清水義範が代表的な書き手だが、夏目漱石の未完の遺作「明暗」の続編という設定で書かれた水村美苗(みずむらみなえ)の「續明暗」などは、まさにパスティーシュの権化といえる。また奥泉光の「『吾輩は猫である』殺人事件」など一連のメタフィクションも、パスティーシュの要素が濃い。