絵画では、主題と関係なく副次的に置かれた物や人。画面のスケール感などを演出する。文学では、基本的に主要人物や本筋と直接的に関わらない添え物についていうが、たとえば庭の鹿威し(ししおどし)の音にかえって静寂や寂寥感を感じさせたり、作者や登場人物の心理とシンクロさせたりといった、効果的な小道具として使われることもある。夏目漱石の「草枕」のように、心理描写を排し、出会う人々を自然の点景と捉えようとする主人公の美意識を描いて、奥行きが深いものもある。また、ほんのひと時すれ違っただけの、縁もゆかりもない点景的な人物を、むしろ重要な普遍的存在と見た国木田独歩の「忘れえぬ人々」のような作品もある。