脳の萎縮など脳損傷によって、記憶機能の低下のほか言語や思考機能の混乱、時に人格の変化などが症状としてみられる疾患の総称。2004年に厚生労働省の検討会が痴呆症(dementia)を認知症へと改称する方針を決めた。「痴呆」の語に偏見を助長するニュアンスが含まれるということがその理由である。認知症には脳血管障害で知的機能が低下するタイプと、記憶障害、見当識障害を伴う進行型のアルツハイマータイプがある。老年性アルツハイマー型は、65歳以上で発病するもの。一方で若年性アルツハイマー型は18~64歳までに発病するものをさす。40~50歳代で発症するケースも多いため、近年の「脳トレブーム」の背景には脳を活性化することで認知症を予防できないかという成人の不安がある。認知症患者とのコミュニケーションをよりよく図る方法の一つとして、バリデーション療法がある。患者の言動には意味があると考え、患者の感情や行動を認め、共感的な言語および非言語コミュニケーションをとる方法である。しかし認知症のケアには介護する側に対する心理的・人的・物的支援の充実といった課題がある。