人間は受精から誕生、そして人生を閉じる瞬間まで、生涯を通して意識や行動が変容し続けることを示す概念のこと。つまり発達とは、もともとの素質が、多くの出来事や人々との出会いと別れを経験することで、成熟する過程である。よって生涯発達心理学は、一生を通した成熟の過程や成熟のつまずきの法則を見いだそうとする。生涯発達心理学の観点からは、老化( aging )は、単なる高齢期における衰退のみを意味するものではない。心理的、生理的、社会的に大きく変容を遂げる時期によって生涯発達をいくつかに区分する。その区分を発達段階と呼ぶ。精神分析学者のエリクソン( Erikson,E.H. )は、人間の発達段階を、乳児期(0~1.5歳)、幼児期(1.5~4歳)、就学前期(4~5歳)、学童期(6~11歳)、青年期(12~19歳)、成人初期(20~30歳代)、成人期(40~50歳代)、老年期(60歳代~)の8段階に分類した。またエリクソンは一つ段階を進むにしたがって、その段階の中で解決しなければならない課題を指摘した。このような生涯発達観は、階段を上るような段階的なものである。しかし、人は一人で生きているわけではなく、必ずそこには対人相互作用を伴っている。自分がある一定期間この世に生きたという事実は、有形無形のレベルで、周囲の人の記憶を通して、この世に生き続けるのである。そのため、今の自分の肉体が滅びた後も次の世代の栄養分となるような、循環する生涯発達観を提唱する研究者もいる。