自閉症の傾向の強さに応じて、社会的困難のある人からほとんどない人までを連続体(spectrum)として捉えるための概念のこと。自閉症とは、社会性、言語・コミュニケーションおよび想像力の領域に機能不全が認められる発達障害であり、脳機能の障害による疾患であるが、かつて遺伝や養育方法など親が原因の病気であるという誤解があった。自閉症は、障害の程度や特徴に応じてこれまでいくつかに下位分類されてきた。例えば、知的障害がみられない高機能自閉症、知的障害や言語発達の遅れがみられないアスペルガー障害、知的発達の遅れがありながら、カレンダー、計算、絵画、彫刻などの芸術、記憶などの分野に関して特殊な才能を示すサヴァン症候群(savant syndrome)などがある。しかし、これら下位分類弁別のエビデンスが乏しいことなどから、2013年に改訂されたDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き第5版)では、自閉症、アスペルガー障害、非定型の広汎性発達障害、小児崩壊障害を包括して、自閉症スペクトラム障害の呼称に統一されることとなった。神経発達障害の下位カテゴリーである。