病理的に他者からの賞賛を求める傾向のこと。自己愛性パーソナリティ障害(narcissistic personality disorder)の有病率はそれほど高くないものの、自己愛傾向は一般的にみられる特性で、通常は青年期に高まりやすい。なぜなら青年期は他者からの評価をもとにアイデンティティーを確立する時期であるためである。自己愛傾向は、自己呈示の差異から誇大型自己愛(oblivious narcissism)と過敏型自己愛(hypervigilant narcissism)の2タイプに大別される。誇大型自己愛とは、誇大な自己像を表出し、周囲に賞賛を求める自己中心的タイプで、従来の主流型であった。一方、過敏型自己愛とは、期待通りの評価が得られないことを恐れて、抑制的に引きこもりがちなタイプであり、自己呈示できないが認めてほしい気持ちは誇大型同様強い。過敏型自己愛は比較的最近になって日本人青年の対人恐怖との関連から研究され始めている。