文部科学省は2006年2月、約10年ぶりに改訂される次期学習指導要領の基本的理念として、初等中等教育のすべての教育内容に「言葉の力」を据えることを決めた。ことばは「確かな学力を形成するための基盤」であるという認識である。そして、国語力の育成と関連づけて、論理的思考力と表現力の重要性を強調している。現行の指導要領では、学習内容を3割削減して、「ゆとり」のなかで、「生きる力を育む」ことを重視した。しかし、国際学力調査などで日本人生徒の学力低下傾向がみられたため、方針を転換したともいえる。特に、読解力と記述力に弱いという傾向が目立った。同時に、ことばの力は「他者を理解し、自分を表現し、社会と対話する」のに最も重要な能力なので、その育成を教育の総合的目標に定めることは適切といえる。ただし、日本社会全体が「察し」を重視し、「言わなくてもわかる」ことをよしとしているので、その実施には周到な対応が求められる。