ろう者のことば。音声言語に加えて、人間の「もう一つのことば」ともいえる。手話は手と身体で概念を空間に転写する表現方法をとる。だから、音声言語のように構成要素を一つ一つ、継時的に表出するのではなく、複数の構成要素を同時に使うことが多い。「火事」は左手で「家」を作り、右手で「火」を作る。手話が正当な言語と認知され、手話使用が拡大するなかで、現代社会の知識情報ニーズに対応した語彙の拡大が求められる。日本手話研究所編「日本語-手話辞典」(1997)には4800の見出し語と8000の用例が収録されている。「安全保障」「アンケート」「株式会社」「金融」「情報」「心臓病」などなど。辞書に載っていない新語もたくさん使われており、語彙の拡充は確実に進展している。手話の諸相を研究する学問は手話言語学(sign linguistics)と呼ばれ、最近では相当の進歩がみられる。