語用論。表現と意図との関係の研究。人は必ずしもことばの意味どおりに意図を伝えるわけではない。「この部屋ちょっと暑いね」で「窓を開けてください」のつもりであったりする。子どもは最初、このようなことばの使い方に気づかない。母親に「玄関見てきて」(開いていたら閉めてきて)と言われ、「はーい、見てきた」と言って戻ってくる。社会化の過程で、その社会の語用規範を習得する。それは文化的規範でもあるので、文化が違うと言い方や解釈がずれることがある。お礼やおわびのことばのような慣用句に問題を見かける。ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手は、捕球の際のけがで休場を余儀なくされたとき、チームに迷惑をかけて「申し訳ない(アイアムソーリー)」と謝り、波紋を呼んだ。過ちを犯したわけではないのになぜ謝るのかと言われた。謙譲の美徳は通じなかったようである。各言語間の比較語用論研究が求められる。