直示用法。語彙(ごい)のなかには、話し手の空間的、時間的位置からみて解釈される項目があり、その用法の原則を研究する。「私、あなた」「これ、それ、あれ」「ここ、そこ、あそこ」「今日、昨日、明日」などは、その典型的な語彙項目である。「行く」「来る」は話し手の居所から他所への、あるいはその反対の移動のことである。ただし、日本語で「あなたのところに行く」は、英語では“I will come to your place.”となる。ニューヨークにいる相手には、“I am coming to New York.”という。視点を相手に移しているのである。従来は語彙項目の研究が主要であったが、現在では範囲が拡大して、話し手の視点と発話の関連を、意味論的、語用論的に究明する。