アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーが1957年に創設した言語理論。人間は言語を生得知識としてもっているという。それは言語能力(linguistic competence)とも普遍文法(universal grammar)ともいわれる。人間は社会化のなかで、生得的な言語獲得装置のなかに言語データをインプットとして入れ、特定言語(日本語とか英語)をアウトプットとして産出する。人間の言語能力は生まれながらに備わっているという考え方は、聴力を失ったろう児が手話を発達させるという事実からも裏づけられる。また、言語の要となるのは、文法である。文法は文を生成する規則の体系で、意味(深層構造)を音声(表層構造)につなげる。それを操作するのは統語部門(syntax)である。「彼の料理」はあいまいである。それは、「の」を使って、「彼が料理をしたもの」「彼が料理をすること」「彼が料理をする方法」などを名詞化したため、意味の構造のなかにあった「もの」「こと」「方法」などが省略された結果である。なお、チョムスキーは政治評論でも有名。