ことばを社会的要素と関連づけて考察する言語学の一分野。私たちは社会組織のさまざまな次元でことばを使うので、このような研究アプローチはきわめて重要である。事実、ことばは社会のいろいろな側面を反映する。このことは語句に如実に表れる。たとえば、日本語では「わたし」を指すことばは、相手との社会的関係で選択される。男性なら、上司や初対面のひとには「わたし」、部下や親しいものには「ぼく」や「おれ」を使うだろう。家庭で子どもには「お父さん」と言ったりもする。また、「あなた」を指すことばも複雑で、会社の上司や社長に「あなた」などと言ったら失礼なことになる。このように、発話行為を構成する言語単位の選択は、話し手の社会的属性、相手との社会関係、発話の生じる社会的場面などによって支配されている。これは言語の変異を説明する有力な手掛かりである。同時に、ことばは、話し手の社会的立場を表明することにもなる。