ある言語の変種。専門的には、地理的方言と社会的方言に分けられ、前者は地方のことば、後者は社会階級や階層を反映することばを指す。一般には、全国的な標準語に対して、地方のことばという意味で使われている。以前は、標準語はきれいで、方言はきたないというのが、社会的通念となっていた。就職のため地方から上京してなまりに苦労する人は少なくなかった。学校教育では方言をやめて標準語を使うように指導された。学校で方言を使うと、罰として生徒の首に「方言札」なるものをかけたところもあった。しかし、1980年ころには、方言の復権がみられ、地方のラジオやテレビの番組で方言を使う司会者が人気者になったりした。2011年実施の小学校の新学習指導要領では、方言は身につけるべき大切な能力とされ、共通語と方言のそれぞれのよさを知る勉強が開始される。方言は恥などではなく、地方特有の温かみのあることばである、という認識の反映である。事実、多くの日本人は共通語と地方方言を、社会的状況に応じて使い分けているのである。これは言語学的には、二言語使用(バイリンガリズム)と同等の能力ともいえる。