消滅の危機にある言語。現在、世界には約6000の言語が存在するが、そのうちの90~95%は21世紀中に消滅すると考えられている。国語や公用語が少数言語(minority language)の使用領域を狭めていることと、都市化や画一化が伝統文化とのつながりを希薄にし、それを表現する民族言語の価値を奪っていることなどが、要因としてあげられる。言語は単にコミュニケーションの手段だけではなく、その民族の認識と反応を映し出す鏡でもある。多くの言語を失うことは、人類の多様な記憶を失うのに等しい。このため、言語保持(language maintenance)や言語復活(language restoration)の努力も各地で見られる。アメリカでは1990年に連邦法により先住民の言語保存が認められ、92年には政府から補助金が出るようになった。先住民の言語には文字がなかったが、文字を工夫し、言語教育に熱心な部族も増えている。例えば、インドネシア中部の少数民族のチアチア語は、言語用筆記文字として韓国のハングルを採用した。少数言語の保持は特定民族の責任ではない。人類全体の責任として、国際的な政策が求められる。