英語の国際的普及は英語の多文化化をもたらしている。世界各国の人々は自分の英語のなかに、自国の言語的文化的要素を組み込んで使うのである。アメリカ人が “It's a piece of cake.”(それは簡単さ)と言うところを、アフリカ人は “It's porridge.”(お粥[かゆ]さ)と言う。日本人なら、“I can do it before breakfast.”(朝飯前だ)と言うかもしれない。私たちは共通語と聞くと、「一様」と考えがちである。しかし、「多様」な言語でなければ、大規模な共通語の働きはできない。人々はいろいろな言い方をするのだから、それらが許容されてはじめて、共通語となる。アメリカ英語が英語の唯一の規範として強制されれば、人々は英語を共通語としたがらないだろう。すべての人々がいつもどこでも同じように話すようにすることは、困難でもあるし、望ましいことでもない。何よりも、それは不自然の極みである。それよりも、違った言い方であっても、意味は十分に理解できるということを大切にすべきである。私たちは多様性を適切に調節できる能力をもっている。