フランスの実業家ジャン=ポール・ネリエールが1990年代から提唱している国際ビジネス共通語としてのツール。Global+Englishからの造語。英語は現在、世界の多くの人々を結ぶことばになっている。それにもかかわらず、英語学習者は英米人などの母語話者の英語を基礎にして学ぶ。しかも、これをマスターするのには、長い時間と大変な苦労をともなう。英語学習ほど、投資しがいのない営みはないなどとも言われる。いっそのこと、英米語とは別の、もっと単純で非母語話者に学びやすい体系を定めて、それを学習したほうが効率的ではないかという考えで提唱されたのがグロービッシュである。これは「通じる」ことに最大の価値を置き、発音は非母語話者のクセがあってもかまわない。日本人のLとRの区別のないのも許される。語彙(ごい)は1500語と定められている。文法も単純なシステムをよしとしている。ただし、イディオムやユーモアなどは使わないものとされている。理解されにくく、誤解のもとになりがちだからである。フランスや韓国では、職業訓練でグロービッシュを研修するところが増えているという。たしかに、現在では、英語を母語としないものどうしで英語を使用する場面が多いので、非母語話者が使いやすい英語のパターンを確立することは有用であろう。しかし、多くの学習者がこれを使用すればするほど、ビジネスを越えて、各自の文化を表現する言語になる可能性をひめている。文化を排除するのではなく、それを受容する次元の考察が望まれる。