街頭、公共施設、店舗などに見られる言語表記のこと。こういった場所で聞かれる言語音声も含まれる。言語景観は、言語環境(linguistic environment)の反映である。環境が変化すれば、景観も変化する。日本の言語景観の最近の特徴は、多言語使用(multilingualism)である。全国の交通機関で、日本語に加えて、英語、中国語、韓国語の表記はふつうになっている。名古屋市の地下鉄ではポルトガル語の車内放送もある。ある自治体では、家庭の可燃ごみ回収袋に7言語を使用している。日本では、外国人の旅行者や居住者が増加の傾向にあり、それにともない行政やサービス産業で、多言語対応が進んでいる。ここには、いろいろとおもしろい現象が見られる。あるスキー場では、「貸靴あります」という看板を韓国語、中国語、そして英語(「Shoes on Hire」)でも表記していた。ところが、この英語はいつの間にか、「Rental Shoes」に替えられていた。また、あるロープウェーでも、「It will be today's last of ropeway going down at 4:24.」が「Today's last ropeway ride is at 4:24.」に変わった。現在、JRなどで使われている「Please inform the station staff or train crew if you find any unattended articles.」は、かつては「... if you notice any suspicious or unclaimed objects or persons...」であった。おそらく利用者の注意によって、変更されたのであろう。不十分な表現を公示することは、ネガティブなイメージを伝達するというリスクをともなうが、公にすることによって、よりよいものになるという利点もある。ある商店では、「ANYWHERE AVAILABLE TO EXPORT. ASK US.(世界中いたる所へ輸出致します。詳しくは係までお申しつけ下さい)」という看板を掲げているが、これで十分にビジネスとなっているのだろう。また、あるところでは、韓国語だけで、「トイレをきれいに使いましょう」という表示がある。韓国語のものしかないということは、韓国人だけに向けられたものであることを示すので、別の問題を生みかねない。今まさに、「メディアはメッセージである」(The medium is the message.)という、コミュニケ―ションの公理を再認識する必要がある。景観言語学という分野も芽生えている。