語と語の組み合わせによる、文の構成ルールで、言語構造の研究で主要な役割を担う。一般には文法と呼ばれるもの。文法の要は語順である。たとえば、日本語は「主語+目的語+述語」「副詞+形容詞+名詞」「関係節+名詞」「名詞+後置詞」などを特徴としており、欧米語とは違った構造を有している。また、日本語の文型に「~は~が~である」があり、いろいろな表現の母体となる。「象は鼻が長い」「広島は牡蠣(かき)がうまい」「農村は朝が早い」などがその例。別の文型「~は~だ」も広く使われている。ただし、「ぼくはウナギだ」は、「ぼく=ウナギ」ではなく、「ぼくは(昼食に)ウナギを食べる」の縮約である。「私は社長だ」は、「私=社長」のこともあれば、縮約だと「私は社長を支持する」「私は社長が嫌いだ」など、いろいろな意味で使われる。また、文には深層構造と表層構造があり、前者は「意味」の構造で、後者は「発話」の構造である。深層構造の文は、変形規則の適応を受けて表層構造の文として実現する。たとえば「人民が、人民を、人民のために治める」という深層構造の文は、名詞化変形を受け、「人民の、人民による、人民のための(統治)政府」という名詞句になる。注意すべきは、名詞化されると深層構造で明確であった文法標識がはっきりしなくなることである。つまり、「人民の」は本来、目的格であるが、ここでは主格のような印象を与えかねない。意味を正確に理解するためには、深層構造を想定する訓練が求められる。