ここ20年ほどは年に数本程度しか作られていなかった時代劇が、2009年には「BALLAD 名もなき恋のうた」「GOEMON」「カムイ外伝」、10年には「花のあと」「座頭市 THE LAST」「大奥」「必死剣鳥刺し」「十三人の刺客」「雷桜」「桜田門外ノ変」「武士の家計簿」「最後の忠臣蔵」と急増した。秋には東映、東宝、松竹が協力してサムライ・シネマキャンペーンを行い、時代劇の面白さをアピールしたが、事務局代表だった東宝の新井宣伝部長は「時代劇は計算できることが大きかった」と語っている。セット、衣装も大掛かりになって製作費も増すが、イベント性も強く、時代劇ファンのみならず、普通の映画ファンもひきつけることになった。観客にとって現代とはちがった社会体制、生活、思考様式、殺陣のアクション描写が目新しく感じられ、作り手側にすれば、現実に縛られる現代ドラマと違って人物設定やストーリーの脚色により自由さが許されるのも魅力だろう。なかでも綿密な構成と魅力的な主人公のまっすぐな生き方が共感を呼ぶ、藤沢周平の小説の映画化が目立ち、11年7月には「小川の辺」が公開される。また11年6月には武将ブームの火付け役となったゲームソフト「戦国BASARA」の劇場用アニメ「戦国BASARA 劇場版」が、9月には累計100万部を超えたベストセラーの映画化「のぼうの城」(原作:和田竜)も公開され、しばらくは時代劇ブームが続くだろう。