1997年、ファンタジー小説「ハリー・ポッターと賢者の石」が出版されるやベストセラーとなって多数の文学賞を受賞し、作者のJ.K.ローリングはたちまち大富豪になり話題の人となった。魔法を使うというファンタスティックな設定、友情とほのかなラブストーリー、悪の化身ヴォルデモードとハリーの戦いというエンターテインメント性の高い内容が受けて、全7冊のシリーズとなり、続編が出版されるたびに世界各国でイベントが行われるほどの人気となった。映画化は、2001年にクリス・コロンバス監督が「ハリー・ポッターと賢者の石」をユーモアをこめて演出し、ハイテク技術を駆使した映像とジョン・ウィリアムスの親しみやすいテーマ音楽もあいまって目と耳の両方で観客を魅了した。シリーズすべてが映画化されたが、07年に書かれた最終作「ハリー・ポッターと死の秘宝」のみ前後編に分けられ、10年11月に「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」、11年7月にPART2が公開されシリーズは幕を閉じた。全作品をWB(ワーナー・ブラザース)が配給し、世界興行収入は77億ドルに達した。これはジェームズ・ボンドを主人公とする「007」シリーズ22作(12年3月現在)、「スター・ウォーズ」シリーズ6作の興収よりも多い。8本の中では最終作が全世界興収13億2811万ドルともっとも多かったが、同作が3Dと2Dの2フォーマットで公開されたことによる。主役トリオのハリー、ロン、ハーマイオニーを演じたダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソンに加え、脇をリチャード・ハリス、マイケル・ガンボン、マギー・スミス、アラン・リックマンといったベテラン陣が支え、毎回新しい魔法術の教師が登場することも観客をひきつけた理由である。ハリー・ポッターに刺激されて、「テラビシアにかける橋」(07年)、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(10年)といったファンタジー映画も作られた。ラドクリフは映画出演で約4500万ポンド(約58億4300万円)の資産を築いたといわれている。