2015年は終戦から70年目という節目の年に当たり、数多くの戦争をテーマにした映画が作られた。中でも、旧ソ連と旧満州の国境に置き去りにされた中学生たちの逃避行を描く「ソ満国境 15歳の夏」、飢餓と空襲におびえる戦時下で、禁じられた恋に身を焦がす男女を描いた「この国の空」、壮絶な従軍体験に基づく大岡昇平の小説を、塚本晋也監督が映画化した「野火 Fires on the Plain」、同名の児童文学を原作に、7人の息子を軍隊に取られた母を寓話風に描く「おかあさんの木」、外務省に無断でユダヤ人6000人にビザを発行した実在の領事の生涯をドラマ化した「杉原千畝」、終戦前夜、昭和天皇の玉音放送を巡る軍部のクーデター未遂事件(宮城事件)を描く「日本のいちばん長い日」、「父と暮らせば」で原爆投下後の広島を描いた井上ひさしの原案をもとに、息子の亡霊と母の対話によって長崎に投下された原爆の悲劇を描いた「母と暮らせば」などが特筆される。ドキュメンタリーに目を向けると、「南京爆撃」や「真珠湾攻撃」を戦い、今は老齢となった零戦飛行士の語る「ひとりひとりの戦場~最後の零戦パイロット~」、終戦により辛くも生き残った元特攻隊員の証言を集めた「筑波海軍航空隊」がある。外国映画では、70年目に際してということではないが、日本公開された時点で、戦争を振り返るよすがとなった作品が目についた。例えばナチス・ドイツの非道を子どもの目を通して描いた「ふたつの名前を持つ少年」、ドイツ軍に追われたユダヤ人が、孤児と犬の案内で、アルプス越えをする「ベル&セバスチャン」、アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所で、ユダヤ人でありながら同胞の死体処理などの雑役に従事した男サウルを描く第68回カンヌ国際映画祭グランプリ(次席)作品「サウルの息子」。製作から30年経つが、いまだに衝撃的なホロコースト(ユダヤ人絶滅政策)を当事者の証言でつづった9時間27分の長編ドキュメンタリー「SHOAH ショア」も再公開された。また日本公開は16年に入ってからだが、フランスの田舎にドイツ軍が駐屯したことで展開される人間ドラマ「フランス組曲」も公開された。