かつて日本はアメリカに次ぐ世界第2位の映画市場だったが、2012年に中国が抜いて以来、その差は広がるばかり。中国の15年興行成績は前年比50%増という驚異的なもので、興行収入は439億人民元(1元19円換算で約8341億円)。内訳ではハリウッド映画は24%増にとどまり、国産映画が69%増になっている。平均入場料は30元(約570円)と安く、中流階級層の増加、シネコンの建設ラッシュが続いており、スクリーン数も15年には約9000も急増し、15年6月末時点で2万7000となっている。このペースで行くと17年にはアメリカを抜いて第1位になる可能性もありうるというアナリストもいる。12年に中国・アメリカ両政府は、WTO映画関連問題解決に関する了解覚書を交わし、中国政府はアメリカ映画の輸入本数を毎年14本ずつ増やすこと、興行収入の分配比率を13%から25%に増やすことが決定。15年には外国映画の輸入は58本が許可されたが、34本のみが興行収入に基づく利益を得るレベニューシェア作品で、残る24本については、中国の配給業者が定額料金を支払うだけのフラットフィー作品で、定額以上の収入は中国側に入ることになる。中国でもヒットした3Dアニメ「STAND BY ME ドラえもん」は後者に入る。ハリウッドも中国市場を重視しており、中国の映画会社との提携が相次いでいる。15年3月に中国のメディアコングロマリット華誼兄弟(ファイ・ブラザーズ・メディア)はSTXエンターテインメントとの提携を発表。17年までに18本前後の作品を共同制作する予定だ。また、中国の巨大テレビメディア集団湖南電広伝媒(フーナンTV&ブロードキャストインターメディアリー)はライオンズゲートと合弁会社を設立。今後3年間に15億ドル(1ドル120円換算で約1800億円)を投じ、14作品を制作すると発表した。一方メディア専門投資ファンド華人文化産業投資基金(チャイナ・メディア・キャピタル CMC)はタイム・ワーナーとの合弁で、旗艦影業(フラッグシップ・エンターテインメント・グループ)を創立し、ロサンゼルス、北京、香港にオフィスを構えて、中国語映画および英語映画の制作、配給、投資を行うとしている。CMCは他の中国企業と共にドリームワークスとも提携し、上海にアニメ・スタジオ「東方夢工廠影視技術(オリエンタル・ドリームワークス)」を設立しており、第1作「カンフー・パンダ3」が16年1月に米中両国で公開された。逆に中国側がハリウッドに投資するケースでは、情報技術関連企業アリババの「ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション」(15年)がある。また、同じ16年1月には、不動産業を中心に映画館網も経営する大連万達集団(大連ワンダグループ)が、「GODZILLA ゴジラ」(14年)や「ジュラシック・ワールド」(15年)などを制作したレジェンダリー・エンターテインメントを35億ドル(約4200億円)で買収。同グループはすでに12年、世界第2位の映画館チェーンを展開するアメリカのAMCエンターテインメントを買収して世界を驚かせているが、全世界規模のブロックバスター作品を手掛けるアメリカの映画会社が、中国企業の傘下に入るのはこれが初めて。