インターネットで募集して、製作資金・公開費用を調達する映画。出資者に商品やサービスの特典が与えられる購入型、収益の分配を得られる投資型に大別されるが、前者の方が一般的。さまざまなプロジェクトへの出資募集を仲介するプラットフォームと呼ばれるサイトでアメリカ最大手のキックスターターが創設した。2009年の創業以来、同社では1300万人の支援者が13万件のプロジェクトを支援し、3500億円以上の資金を提供してきたが、映画では15年までに47809本の募集キャンペーンを行い、目標額に達したのは42.6%だった。テレビシリーズ「ヴェロニカ・マーズ」の劇場版(ロブ・トーマス監督)製作に際して、570万ドルを集めたことで知られるようになり、世界的規模で広まった。同作の場合、資金提供者には撮影台本、作品のデジタルダウンロード版やハードディスク版、製作ドキュメンタリーのDVD、テレビ版のDVDセット、サイン付きポスターやTシャツ、プレミア試写でのレッド・カーペット参列、映画出演機会などが与えられた(寄付した金額により特典がプラスされていく)。日本でもクラウドファウンディングで製作費を集めた映画が増えている。16年に公開され、数々の映画賞に輝いた「この世界の片隅に」(片渕須直監督)は、金額(3900万円)、支援者数(3374人)、目標達成時間の早さ(8日間)が一番だった。支援メンバー証(オリジナル缶バッジ)、原作者書き下ろしイラスト入り主人公からの手紙、エンドロールに名前が記載されるなどの特典が付与された。63館からスタートした上映館も累計390館超にまで拡大し、上映も1年以上続いた。興行収入26億7000万円、累計観客動員200万人も予想を大きく上回った。この作品の成功で、国内でもこの方式による映画製作が改めて注目されている。