16世紀初めに北イタリアに起こったとされる民衆的な演劇の形態。「アルテによる劇」の意。アルテとは芸術ではなく職能組合すなわち座のことで、中世キリスト教社会において否定されてきた職業俳優が、ルネサンス期を経て再び社会の片隅に現れ、「座」を結成するに至ったという逆説的な意味を持つ。少人数の集団による巡業を基本とし、俳優は類型的な役柄(ストックキャラクター:代表的なものに商人のパンタローネ・下僕で道化のアルレッキーノ・女中のコロンビーナなど)をそれぞれ持ち役にし、特徴ある仮面や衣装、言葉の訛(なま)り、身のこなしなどで役柄を印象づけた。これを基盤に基本的な筋書をいくつか用意し、後は即興を織り交ぜ、歌や踊り、アクロバットなどを取り入れて観客を喜ばせた。最盛期には多数の一座が全ヨーロッパを巡業し、宮廷で厚遇されるものも現れた。特に道化役は無数のバリエーションを生み、モリエールを始め以後の喜劇に大きな影響を与えた。18世紀に入って市民社会が成熟し、マリヴォー、ボーマルシェ、ゴルドーニなどの世相を映した洗練された喜劇が愛好されるにつれ衰退に向かった。