ヨーロッパ近代戯曲の祖とされるノルウェーの劇作家(1828~1906)。若年から演劇に携わるが、なかなか認められず、劇時「ペール・ギュント」の成功を経て、1879年の「人形の家」で大きな反響を呼ぶ。以後「ゆうれい」「人民の敵」「野がも」「ヘッダ・ガブラー」など、近代の社会と家庭に潜む問題を、古典的で緊密な構成の中に、写実に徹しながら含意に富む台詞を積み重ねる手法で深く描いた。近代社会に対する鋭い問題提起であると同時に、ヨーロッパにおけるリアリズムを基調とした新しい演劇運動とも密接に結びつき、大きな影響力を持った。それは、ほぼ同時期に近代化をめざした文芸協会など日本の新劇にとっても同様であった。