中国の代表的な伝統演劇。北京を中心に約200年の歴史をもつ。華麗な色彩美と管・打楽器を中心とした独特の音楽による京劇は、歌舞伎とともに東洋演劇の雄として世界的な評価を得ている。ペキンオペラとか聴戯(看戯ではない)と呼ばれるだけあって唱(歌唱)の比重が大きく、俳優はみな歌いかつせりふを言う。この点、竹本、長唄など音楽伴奏陣が歌を担当し俳優はせりふだけの歌舞伎とは異なる。しかし、歌舞伎との間には類似点が多いことも事実。例えば、生(せい 男の役)、旦(たん 女の役)、浄(じょう 豪快な人物や敵役)、丑(ちゅう 道化役)など役柄の分化がきっちりとしている点、主として浄の役に施される瞼譜(れんぷ)という化粧法、歌舞伎の見得(みえ)に通ずる亮相、武打(立ち回り)を重視する点、などである。また梅蘭芳、その子梅葆玖などに代表される女方芸も両者に特徴的だが、最近では女優の登用が目立つ。1989年春、市川猿之助と京劇のスター李光が競演したスーパー歌舞伎「リュウオー」は、この類似と相違を際立たせて大きな関心を呼んだ。中国には京劇を頂点として伝統的な地方劇が360種もある。