2010年頭のクラシック音楽界に衝撃を与えたのは、指揮者・小澤征爾(1935~)のがん告知であった。見つかりにくいといわれる食道がんを人間ドックで早期発見した小澤は、音楽監督としての最後のシーズンであったウィーンでの活動や、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会をはじめ、6月までの内外の仕事をいっさいキャンセルし、治療に専念した結果、自身が総監督を務め、夏から秋に開催されるサイトウ・キネン・フェスティバル松本では、プログラムの一部を振れるまでに回復した。11月には日本人として初めてのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団名誉団員となり、12月にはサイトウ・キネン・オーケストラとのニューヨーク公演も行ったが(座ったままの指揮)、これが災いして、今度は持病の腰痛を悪化させ、11年早々に再び治療を行うことになった。水戸室内管弦楽団定期演奏会での指揮者は交代し、小澤征爾音楽塾でのプログラムはすべてキャンセルされて、ファンをがっかりさせた。75歳を迎えた小澤にいつまでも若々しい指揮姿を期待するのは酷であろうが、完治して復帰してくれることを待ち望む声は多い。