1979年生まれ。96年にロン・ティボー国際音楽コンクールで優勝し、ソロ・バイオリン奏者として国際的な活動を展開していた樫本大進が、2009年6月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第一コンサートマスターに指名されたのは意外なできごとであったが、記録的な長期間、同職を務めていた安永徹が同年3月で退いた後を埋める画期的な人事でもあった。試用期間を経て、楽団員の3分の2以上の賛成によって正式に就任することになっていたが、1年半ほどの間に、技術的には万全、指導力も抜群というわけで、樫本への信頼は増すばかり。定期演奏会で採り上げられたリゲティのバイオリン協奏曲のような難曲でも、ソロ奏者のルノー・カピュソンと張り合わんばかりのソロで好サポートを見せた。また、自身が音楽監督を務め、10年10月に開催された姫路国際音楽祭ル・ポンでも、ベルリン・フィルの面々を引き連れ、和気あいあいとしたアンサンブルのなかで核としての存在感を示した。そのため、同年12月、第一コンサートマスターに正式に就任。これでベルリン・フィルはビオラ首席奏者の清水直子とともに、2人の首席日本人奏者を持つオーケストラであり続けることになった。