パキスタン、バングラデシュ、スリランカを含むインド亜大陸とその周辺にはかつての宮廷で生まれた古典音楽から民謡まで多種多様な音楽がある。古典音楽では、ラーガと呼ばれる旋律体系とターラと呼ばれるリズム型を、時刻や場の雰囲気にあわせて選び、それに基づいた即興演奏が行われる。基本は声楽だが、器楽演奏もさかんで、北部のヒンドスタニ音楽では弦楽器のシタールや打楽器のタブラが、南部のカルナティック音楽では弦楽器のヴィーナや打楽器のムリガンダムが使われる。古典音楽以外にも各地に無数の伝統音楽があり、ラジャスタンの各種芸能、ベンガル地方の放浪詩人バウルの音楽、イスラムの聖者をたたえ、神との一体化を願うカッワーリー、詩に重点を置いたペルシャ起源のガザルなどは国際的にも知られている。ポピュラー音楽ではムンバイ(旧ボンベイ)やチェンナイ(旧マドラス)で作られる映画音楽が人気で、国外ではボリウッドと呼ばれている。パンジャブ地方の民謡をもとに1980年代にイギリスのインド系移民の間で生まれたダンス音楽バングラのように、本国に還流して定着した音楽もある。主な音楽家にラヴィ・シャンカル、アリー・アクバル・カーン、ザキール・フセイン、U.シュリニヴァース、カウシキ・チャクラバルティ、ラター・マンゲーシュカル、アーシャー・ボースレー、ムケーシュ、ムハンマド・ラフィ、キショール・クマール、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン、R.D.ブルーマン、A.R.ラフマーンなど。