キューバ音楽の最も基本的なジャンルのひとつ。1920年代にハバナで生まれた。キューバ音楽は新大陸やカリブ海各地のポピュラー音楽の中でも、先住民系、ヨーロッパ系、アフリカ系の要素の混合のバランスがいいと言われており、ソンはそれを象徴する音楽。その理由は、スペイン伝来のギター弾き語りの歌や二声のハーモニー、アフリカ伝来のリズム感覚やコール&リスポンスの構造(主唱者の歌とそれに対する呼応のくりかえし)、侵略や伝染病で滅んだ先住民の残したマラカスや新たに作られたクラベスなどの楽器、といった音楽の構成要素からも感じられる。ソンの源郷はキューバ東部と言われるが、20年代後半にギター、トレス、ベース、ボンゴ、クラベス、マラカス、グィロ、トランペットなどで演奏する典型的な編成が生まれたのは各地からの出身者が集まる首都ハバナの音楽界だった。後にはもっと大きな編成でも演奏されるようになった。30年にはアメリカ経由でソンの名曲「エル・マニセロ」(「南京豆売り」)が世界的にヒットした。しかしアメリカの会社がこの曲にルンバ(rhumba ; rumba)というジャンル名をつけたため、名称の混乱はいまも続いている。90年代末にはソンを得意とするキューバの長老たちによるブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの「チャン・チャン」がヒットした。主なアーティストに、マリア・テレサ・ベーラ、トリオ・マタモロス、セプテート・ナシォナール、セプテート・アバネラ、アルセニオ・ロドリゲス、ベニー・モレーなど。