ジャポニスムは、本来19世紀ヨーロッパで見られた浮世絵や工芸などを中心とした 日本趣味、日本文化への心酔を指す。ファッションの世界では、近年、中国への関心などからアジアに対する憧憬(しょうけい)は見られたものの、日本文化からの着想は減っていた。だが2012~13年秋冬コレクションでは、プラダの「日本文化」からとられた「付け下げ」「花」のモチーフ・帯のディティール、エミリオ・プッチのキモノスリーブ、ボッテガ・ヴェネタの刺し子、グッチの和紙やふすま絵など、日本の伝統文化からの着想が多く見られた。11年の 東日本大震災へのクリエーターたちの思いが、1年経て熟考したかたちとなって現れたと推測される。15年春夏コレクションでは、若いデザイナーを中心にジャポニスムの再燃が見られた。カタカナ、平仮名をグラフィック柄として用い、着物柄、春画などに着想した柄が増加。パリのグラン・パレ・ナショナル・ギャラリーで開催された「北斎」展、ビナコテーク・ド・パリで開催された春画展「ゲイシャの時代における春画:日本美術における禁じられた名作」、ロンドンの大英帝国博物館「春画展」からの影響が大きいと思われる。