デニムブームに乗って、岡山県産デニムが世界の注目を集めている。歴史あるデニムの産地として定評があるが、2000年を越えたころから、デニムの製織から縫製、加工までジーンズ関連の企業が集まり、最近は「デニムの聖地」とまで呼ばれるようになった。背景には、日本国内だけではなく、世界のラグジュアリーブランドに起用されることが多くなったことがある。例えばディーゼル(DIESEL)は15年に「メードインジャパン」モデルを発売。生地の生産から加工までの全行程を岡山で生産、スペシャルパッケージのシリアルナンバー付きという期間限定版であった。コンバーストウキョウ(CONVERSE TOKYO)も岡山デニムと協業、15年のパリコレクション期間中に発表されたAIZOME1 ENVIRODENIM(アイゾメイー エヴァロンデニム)がフェアトレードのオーガニックコットンを用い、伝統的な岡山デニムの製法にならい、化学染料をいっさい使わない「藍(あい)」染めや、特許取得の ENVIRODENIM(R)の製法で、環境保全や社会貢献などに配慮したデニムコレクションを発表。デザイナーにはディオール、ランバンでデザインを手掛けたアレキサンドル・ミエルを起用、全工程を岡山で生産、オーストラリアに本社を置くパリブランドとして話題を呼んだ。歴史をたどると、ビッグジョン、ボブソンなど大手メーカーが双璧(そうへき)であった時代を経て、現在では、個性的なブランドが数多く誕生。ダメージ加工やむら糸染色でビンテージ感を演出するなど小さな工房が特徴のあるデニムを作り出している。倉敷市児島地区に「桃太郎ジーンズ」「倉敷天領デニム」「カミカゼアタック」など、人気メーカーが集まっているところから、岡山児島デニムとも呼ばれる。山本耀司がクリエイティブディレクターを務める「Y-3」は13年春夏コレクションより日本のデニムブランド「ウエアハウス(WAREHOUSE)」とコラボしたカプセルコレクションを発売している。海外への輸出が売り上げの半分を占めるメーカーの「クロキ(KUROKI)」では、シャネル、ルイ・ヴィトン、グッチ、プラダなどラグジュアリーブランドとの独占的な取り組みも増加している。「ドレスダウンしないカジュアル」という相反する最近のトレンドを表現できる岡山製はさらなる注目が集まっており、コレクションブランドをはじめ、多くのカジュアルブランドも取り入れ始めている。13年には、ジーンズソムリエプロジェクト事務局(岡山県倉敷市)が日本初のジーンズの資格認定試験「ジーンズソムリエ資格認定制度」を創設。繊維業界や小売業界でジーンズに携わるプロフェッショナルな人材育成を目的としている。デニム以外にも、「メードインジャパン」の品質への評価は高まる一方で、例えばタオルの内野、リボンやテープのSHINDO、刺繍(ししゅう)等、ファッションデコレーションのエミュ・ラクサイ(EMYU RAKUSAI)などもラグジュアリーブランドとのビジネスが次々と成立するなど、日本企業の活躍が近年目立っている。丁寧で繊細な物作りと粘り強い開発力で「メードインジャパン」の価値をさらに高め、ラグジュアリーブランドをはじめ世界的認知へとつながっている。